骨切り術は人工関節置換術と同様、体にメスを入れますので、手術による体への負担やリハビリ期間は同程度です。術後に関しては、リハビリ後も人工関節の金属の摩耗やゆるみを防ぐために、膝に負担をかける動作を避けなければいけない人工関節置換術に対し、骨切り術は、骨がくっついた後は活動制限がないという点で、術後の負担は少ないと言えるかもしれません。
骨切り術のメリット・デメリットについてもご紹介します。
■骨切り術のメリット
・自分の関節を残すことができる。
骨切り術では、骨折と同じような状態になるため、骨を切ったあとは、いったん金属の板で骨同士を固定します。その後、骨がくっついた後に再手術を行い、金属の板を取り除きます。ただ、骨を切ってからくっつけるため、骨癒合には2年程度かかる場合もあります。
・金属が体内に残らない
上記でご説明したとおり、骨切りの術後に金属の板を取り除く再手術を行えば、体内に金属は残りません。人工膝関節は膝の骨が金属に完全に置き換わるため、体内に金属が残り、さまざまなリスク(再置換術や金属への感染など)が生じる可能性があります。
・骨癒合した後、活動制限がない
骨がくっついた後に、骨の固定に使った金属を取り除けば、活動制限はありません。スポーツや重労働を行うことも可能です。そのため、仕事やスポーツなどで活動性の高い方や年齢が若い方に骨切り術は特にすすめられます。
一方、人工膝関節置換術では、人工関節の金属の摩耗を防ぐために活動制限が必要になります。金属の摩耗が進むと、再手術で人工関節を入れ替える必要が出てきます。
■骨切り術のデメリット
・体への負担がかかる
体へメスを入れることになるため、体への負担はかかります。手術のときには、エコノミークラス症候群、感染症などの合併症リスクがあります。
・入院やリハビリが必要である
手術後は入院が必要なため、長期間の休みがとれない方には、骨切り術を行うのが難しくなります。入院期間は2カ月程度はかかると見込んでおいた方が良いでしょう。機能訓練のリハビリ期間は3カ月から6カ月程度の期間を要します。片足が付けない期間もあるため、リハビリに苦労する方は少なくありません。
※リハビリ期間に幅があるのは、その人個人の筋力の程度、体重、手術前の膝の状態、術後の合併症や、リハビリへの意欲、年齢、認知症の程度など、さまざまな要因で期間に個人差があるためです。
・自身の骨がくっつくまで活動制限がある
骨がくっつくまでは、正座など膝への負担がかかる動作や激しい運動、仕事などは控える必要があります。術後に積極的に動きたい方も、活動量を落とさないといけない時期があるということです。
■骨切りは人工関節を「遅らせる」手術
骨切り術は、人工関節にするのを遅らせるための有効な手段である、と言われています[1]。骨切り術で変形性膝関節症が完治するわけではありませんが、骨がくっついた後は活動制限がないなどは、活動的な人にとってはかなり大きなメリットがある手術と言えるでしょう。
また、骨切り術後に膝が痛む場合は、当院が行う再生医療がいい適応になる場合があります。術後、痛みが気になる場合は、はじめての来院予約よりお問い合わせの上、ぜひご相談ください。