情報提供医師

武藤 真隆 医師(名古屋ひざ関節症クリニック 院長)

日本整形外科学会認定 専門医/身体障碍者福祉法指定医(肢体不自由)/難病指定医

武藤医師の詳しいプロフィール

PRP-FD注射とは

膝の痛みのイメージ

PRP-FD注射は、血液に含まれる成長因子を患部に投与する治療法で、自然治癒力を高め、早期治癒や慢性化した関節痛の改善などが期待できます。
患者さまの血液から血小板の濃度が高い液体成分(PRP=多血小板血漿)を抽出し、血小板から分泌される組織の修復を促す物質の成長因子だけを濃縮したものを、注射器で投与します。採血と注射の処置なので、手術を避けたいアスリートや変形性膝関節症の患者さまの選択肢として、近年広まっている治療です。

<PRP-FD注射の治療手順>

  • 採血

    1.採血

    PRP-FDを作成するため、患者さまの血液を採取します。
    採血量は50mLほどなので、貧血気味の方でもご安心ください。

  • PRPの作成

    2.PRPの作成

    まず、血液を専用のキットに入れ、遠心分離にかけます。
    これにより血小板成分を濃縮したPRPを抽出します。

  • 無細胞化・成長因子の活性化

    3.無細胞化・成長因子の活性化

    無菌管理された空間で、PRPに含まれる余分な細胞を除去します。
    さらに血小板から分泌される成長因子を活性化し、濃縮します。

  • フリーズドライ加工

    4.フリーズドライ(FD)加工

    専門の加工施設の技術で、成分をフリーズドライ化します。
    長期保存が可能なので、患者さまのご希望や膝の状態に合わせて投与できます。

  • 治療

    5.治療

    PRP-FDを生理食塩水に溶いて注入液を作成し、膝関節に投与します。
    ヒアルロン酸同様の注射器で行え、処置も数分で終了します。

こんな人におすすめ

ひとつでもあてはまる人はご相談もしくはご検討ください。

PRP-FD注射に向いている方

□ 変形性膝関節症と診断されている□ 古傷の影響による慢性的なひざの痛みがある□ 膝に水が頻繁にたまる□ ヒアルロン酸注射の効果が持続しなくなってきた□ 膝の痛みで外出やウォーキングも億劫になった□ 将来的には人工関節の手術と言われている□ 今は痛みが軽度だが、手術を回避し得る治療がしたい

当院がPRP-FD注射をおすすめする理由

上記のような患者さまに当院がPRP-FD注射をおすすめするのには、3つの理由があります。

血小板が放出する成長因子の例

理由1、血小板由来の成長因子の作用に期待
血小板からは複数の成長因子が分泌され、それぞれ下記のような働きに貢献します[1]
●軟骨や靭帯の主成分であるコラーゲンを産生する●修復に必要な細胞を呼び寄せるシグナルを発信●細胞分裂を活発にし、自然治癒力を一時的に向上させる
PRP-FD注射はこうした作用を持つ成長因子を膝関節に注入する治療法です。膝の痛みの原因である炎症を抑えたり、関節機能を改善が得られ、関節の変形を抑制することという、ごまかしではない効果が期待できます。

成長因子の種類 主な働き
PDGFa-b 組織の修復に関わる細胞分裂を促進
コラーゲン産生
TGF-β
(トランスフォーミング)
損傷組織や筋細胞の修復
コラーゲン産生
VEGF 血管の形成に関与
炎症抑制に働く細胞の増殖
bFGF/EGF 軟骨細胞や骨芽細胞の増殖を促す
骨や血管の再構築を促進させる
CTGF 軟骨の修復や線維化を促進
血小板を付着させやすくする

理由2、ヒアルロン酸注射より長期的な効果
ヒアルロン酸は投与しても体内に吸収される成分のため、基本的には一定期間、継続して治療を行い、その後も痛みの具合に応じて定期的に注射することが一般的です。一方、血液成分を利用する治療では、手術不要であるメリットはそのままに、ヒアルロン酸注射よりも長期的な効果の持続が期待できます。変形性膝関節症に対するPRP治療では、治療後1年間は疼痛緩和や機能改善においてより多くの利益をもたらすとする研究報告もあります[2]
当グループではヒアルロン酸注射の効果が得られなくなったことから治療を受けられる方も多いのですが、平均的に半年以上の痛み軽減の効果持続は確認済です。

PRP-FD注射は変形性膝関節症の治療に向いています

理由3、変形性膝関節症の治療に向いている
関節周囲の靱帯炎や腱炎、スポーツ外傷や事故による半月板や靭帯の損傷からくる痛みなどにも適応するPRP-FD注射ですが、特に当院の患者さまにもっとも多い変形性膝関節症の痛み治療に効果的であることも、おすすめの理由にあげられます。
当グループでも、開院当初は一般的なPRP治療(成長因子ではなく、多血小板血漿を投与する治療)を行っていました。そのときの症例とPRP-FD注射の症例を比較調査した際、変形性膝関節症に対してはPRP-FD注射の方がより痛みの改善が得られたのです(第18回日本再生医療学会でも報告済)。そのため当院では、PRP療法の中でもPRP-FD注射を採用しています。

安全性や治療後の注意点

手術を行わない治療なので低侵襲で、治療後も日常生活を大幅に制限することはありません。ただ、治療後の生理的反応を助長させたり、リスクを高めないためにも、以下の点にご注意ください。

●治療当日はシャワーだけにして、入浴はお控えください。●飲酒や激しい運動、マッサージなどは、腫れがひどくなる可能性もあるので、2~3日はお控えください。●スポーツなどへの復帰は2~3か月後を目安にお考えください(個人差があります)。●安静にし過ぎると膝が拘縮(硬くなる)ことがあります。関節に負担はかけないよう、座った状態で膝を動かすような体操は積極的に行ってください。

治療に伴うリスク

PRP治療とヒアルロン酸注射を効果と安全性の面で比較した試験では、ヒアルロン酸や生理食塩水に比べて有害事象のリスクの増加は見られなかったとの報告があり[3]、原料が同じPRP-FD注射でも同様の内容が予想されます。
ただし、リスクがゼロということではありません。注射針を刺すため理論上、感染のリスクはあり得ます。そのほか血管や神経の損傷、関節内出血といった可能性も考えられます。ヒアルロン酸など注射治療でもそれは同様ですが、対策して治療しているので、これまで実際に経験はありません。
また、注射後は腫れや痛み、皮下出血などが現れることがありますが、時間とともに治まります。お辛い場合でも、痛み止め(ロキソニンもしくはカロナール等)で対処いただけます。ただし、ご不安な症状がある場合はご遠慮なくご相談ください。

よくある質問

PRP治療とどう違いますか?

PRPとPRP-FDの相違点を表すアイコン

PRPは血小板を多く含む液体成分で、血小板以外にも血液内の細胞を含んでいます。一方のPRP-FDは、組織の修復に作用する成長因子のみを2倍以上に濃縮したものです[4]。内容物の違いから、以下のようなことが異なります。

●治療後の反応痛が少ない
正常な反応なので問題はありませんが、PRP治療の場合、治療後に強い反応痛が生じます。これは
PRPに含まれる細胞の反応と考えられており、無細胞化したPRP-FDでは、治療後の反応痛が少ない傾向にあります。

●1回の採血で保存が可能
濃縮した成長因子をフリーズドライ加工したPRP-FDは、保存が可能です。そのため、治療のたびに採血しなくても、作成しておけば2回目以降は注入だけの処置ですみます。また、お忙しい方でもご自身のタイミングで治療日を調整できるというメリットもあります。

●採血から治療まで時間がかかる
PRPは各クリニックで作成するため、採血当日に治療を受けることができます。PRP-FD注射の場合は、専門の加工施設に委託するため、一定の品質は維持されますが、作成に3週間ほどかかります。

PRP治療 PRP-FD注射
成長因子の総量 PRPの2倍以上
治療後の反応痛 強い 弱い
加工 各医療機関で加工
(環境や人員によって違いが生じる場合も)
専門の加工施設に委託
(一定の品質維持)
加工時間 10~15分程度 3週間
保存 不可 36か月の保存が可能

効果が出るまでの期間はどのくらいですか?

早いと2週間ほどで膝の痛みの軽減を実感したとおっしゃる患者さまもいらっしゃいますが、当グループの21,700例以上の症例では、概ね1ヵ月ほどで効果の出現が確認されています。もちろん治療前の膝の状態によっても効果は違ってきますが、その後3か月~6か月にわたり、改善の効果が持続するケースが多いです。

何度も注射しないとダメですか?

1回の投与で痛みの改善を実感されるケースも多く見受けられます。ただ、治療前の膝関節の状態によっても異なり、変形性膝関節症が進行していたり、損傷や変形が大きい場合には、2~3回、数か月後に追加投与を行うこともあります。
適した治療プランについては、初診の診断で効果の見込みなども含め判断し、ご提案させていただきます。

膝の症状がひどくなくても受けられますか?

過去にスポーツ外傷や膝のけがを負った方などから、今は痛みがそれほど強くないけれど適応になりますか?という質問はしばしばいただきます。膝の状態を診察してみないと言い切れませんが、症状が軽度であっても治療は可能です。
当グループの症例の統計でも、例えば変形性膝関節症の場合はグレードが低い(重症度が低い)ケースの方が、より良好な結果が得られています。また、早めに治療することでその後の進行の抑制も期待できます。
適応かどうかについては、MRI画像も用いて診断いたしますので、興味をお持ちでしたらまずはご相談いただければと思います。

どんなケースだと適応外になりますか?

膝関節の変形や損傷が重度だと、治療効果が期待できないこともあります。ただ、診察をしてみないと分からないことなので、初診の診断できちんとご説明さしあげます。
また、感染症や重度の糖尿病では血液が固まりやすくなっていることがある、もしくは固まりやすくさせてしまう可能性が考えられます。また、悪性腫瘍がある場合、成長因子を投与する治療ですので、腫瘍の増殖が促進する可能性が否定できません。そのため、お断りすることがあります。
ただし、程度によっては治療可能な場合もあるので、まずはご相談ください。

費用について

PRP-FD注射の費用については、料金ページにてご案内しております。また、当院の治療は自由診療になりますが、医療費控除制度が適応される場合があります。併せて内容をご確認ください。


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