情報提供医師

武藤 真隆 医師(名古屋ひざ関節症クリニック 院長)

日本整形外科学会認定 専門医/身体障碍者福祉法指定医(肢体不自由)/難病指定医

武藤医師の詳しいプロフィール

ヒアルロン酸注射とは

ヒアルロン酸は、靭帯の皮膚や関節内などにもともと存在する物質です。身近なところでは、化粧品に保湿成分としても添加されています。医療においては、精製したヒアルロン酸ナトリウムを関節腔内に注射すると、痛みや炎症を軽減する効果が期待できます。変形性膝関節症の保存療法として、日本では一般的に行われている治療法です。

<ヒアルロン酸注射の治療手順>

  • 膝の消毒

    1.膝の消毒

    まずベッドに横になってもらい、注射する膝の表面の消毒を2回行います。

  • 治療

    2.治療

    ヒアルロン酸を関節内に注射をします。
    注射は10秒もかからず、ベッドに横になる時間や消毒を含めても、所要時間は5分程度です。

こんな人におすすめ

ひとつでもあてはまる人はご相談もしくはご検討ください。

ヒアルロン酸注射が向いている方

□ 膝関節が動かしにくい□ 膝を動かすと痛みを感じる□ 変形性膝関節症と診断された□ 薬物だと副作用が気になる□ 保険適応の膝と肩以外の関節痛

当院がヒアルロン酸注射を扱う理由

1.関節の潤滑と痛みの改善

ヒアルロン酸注射の膝関節の治療のイメージ

ヒアルロン酸は関節内を満たす関節液にそもそも含まれる成分です。関節液の粘性と弾性の正体で、膝に加わる衝撃をクッションのように軽減したり、膝の動きを滑らかにするのに重要な役割を果たします。
変形性膝関節症になると、関節液に含まれるヒアルロン酸の分子量と濃度が低下します。このクッション性や関節の動きが悪くなった状態の改善が、ヒアルロン酸を関節液に補充する治療で期待できるのです。

2.炎症の抑制

ヒアルロン酸注射によって、関節液に関節内のダメージを抑制する働きがあり[1]、炎症を抑える作用をもたらすとされています。これにより痛みや腫れ、熱感といった変形性膝関節症の症状軽減が期待できます。

3.複数の関節痛に可能

ヒアルロン酸注射の保険適用が認められているのは、変形性膝関節症と四十肩や五十肩などの肩関節周囲炎に限られます。ただ、人体に関節は他にもあり、膝のように関節痛が起こり得ます。当院では自由診療ですので、股関節や足関節などの痛みにお困りの方にも、適応と判断すればヒアルロン酸の投与が可能です。

こんな方にはPRP-FD注射がおすすめ

変形性膝関節症の重症度に関わらず注射を行うことは可能ですが、中期〜末期においては関節の変形が進行していて、痛みの改善効果が得られないケースも少なくありません。そういった患者さまには、血液内の有効成分を膝関節に投与する、PRP-FD注射をご提案しております。ヒアルロン酸と同じく注射で完結しながら、変形性膝関節症の中期以降にも痛みや炎症の改善効果が期待できます[2]

ヒアルロン酸注射 PRP-FD注射
作用 関節の潤滑
軟骨の保護
炎症の抑制
炎症の抑制
組織の修復を促す
持続性 体内に吸収されるので、週1回の投与を3〜5週は継続。その後も痛みが再発すれば医師の判断で定期注入。 当グループの症例データでは、1回の投与で12ヶ月にわたり改善の持続が得られている。
副作用 重篤な副作用はほぼなし 重篤な副作用はほぼなし
メリット 保険適用でも受けられる
診察当日にすぐ受けられる
進行期の痛みにも有効
組織の修復が期待できる
デメリット 効果が一時的
軽度でないと効果を得にくい
費用が自己負担
採血から治療まで3週間の待機

【参考リンク】
Q: ヒアルロン酸注射を続けないと膝の痛みは悪化しますか?

安全性や治療後の注意点

手術を行わない注射治療なので、治療後も日常生活を大幅に制限することはありません。ただ、治療後の生理的反応を助長させたり、リスクを高めないためにも、以下の点にご注意ください。

●注射当日は入浴は控え、シャワーだけにしてください。●腫れがひどくなる可能性もあるので、注射後の激しい運動はお控えください。●食事は通常通りで問題ありませんが、喫煙は控えてください。

治療に伴うリスク

一般的に1000人中6人程度は副作用が起こるとされていますが、局所の痛みや腫れなど軽微なもので、経過とともに治まっていきます。また、血流が少なく感染に弱い膝関節内に針を刺すため感染症のリスクはあります。
これらの予防のため、注射前には丁寧に2回消毒を行い、痛みができるだけでないように針先にも注意をはらっています。これまで数多くヒアルロン酸注射を行った中でも感染、またその他の問題となるような副作用は経験がありません。

よくある質問

ステロイド注射とどう違いますか?

人体の副腎という臓器ではステロイドホルモンが生理的にも作られて、さまざまな身体機能を維持しています。それを薬理作用として「膝関節内の炎症」を抑える目的で薬として使用するのが、ステロイド注射です。
このステロイド注射には強力な抗炎症作用があり、膝関節の強い痛みや炎症があるときに効果を発揮します。変形性膝関節症では、ヒアルロン酸注射の潤滑や関節の保護作用で改善されない痛みに対して検討されます。効果には個人差がありますが、持続性ではヒアルロン酸、即効性ではステロイド注射が優位という報告があり[3]、経験上もステロイド注射の即効性を実感したケースは少なくありません。
ただ、関節における心配な副作用が、ステロイド関節症です。頻回なステロイドの関節注射で、関節破壊が起きることがあります。この副作用もヒアルロン酸注射との違いのひとつにあげられます。

ヒアルロン酸注射 ステロイド注射
注入成分 ヒアルロン酸ナトリウム ステロイド(副腎皮質ホルモン剤)
作用 関節の潤滑
軟骨の保護
炎症の抑制
強力な抗炎症作用
メリット 副作用のリスクが少ない
複数回の投与が可能
強い痛みや炎症にも効果を発揮
即効性が期待できる
デメリット 痛みが強いと奏功しにくい 頻回な投与で関越破壊のリスクがある

初期ならヒアルロン酸注射で完治しますか?

ヒアルロン酸はあくまで潤滑剤で、機械でいうところの「油をさしている」という状態です。また、変形性膝関節症は年齢とともに進行していくため、完治するということはありませんが、症状の軽減、うまくいけば消失し、寛解状態になることはあります。
症状が治まって穏やかな「寛解」という状態であるため、症状の再発の可能性があり、再発しないように治療の継続や定期的な診察、運動療法の併用や生活習慣の改善が必要です。

何年も継続して注射していますが大丈夫でしょうか?

保険診療でのヒアルロン酸注射は、週1回の投与を3~5週継続し、その後も痛みが再発するようなら医師の判断のもと、定期的に行います。当院の患者さまの場合、10年以上打ち続けているという方も少なくありません。
ただ、注射治療には感染のリスクが伴うため、頻回になるほどそのリスクは高まります。また、定期的な通院とその際の待ち時間なども考えると、相当な時間を医療に費やすことになってしまいます。そのため、ヒアルロン酸注射で改善が見られない、効果が持続しなくなってきているなどの実感がある方は、他の有効な治療法を検討することもひとつの手段でしょう。

ヒアルロン酸注射は痛いと聞きますが本当ですか?

確かに穿刺の痛みや生理的反応の痛みのリスクは考えられますが、激痛というほどではありません。もしかしたら関節内に注射するところ、関節外に漏れてしまっているのかもしれません。関節腔内は関節液に満たされた空間になっていますが、関節外には筋肉などの組織で構成されています。そもそもスペースのない組織内へ注入したため、痛みが強く出たということも考えられます。

同じ週に2回打っても問題ありませんか?

理論上は、効果を得ることや作用的に問題ないかとは思います。ただ、臨床試験で週2回打つケースを調べたわけではないので、エビデンスや効果の確認はできていません。さらに、頻回の注射は感染リスクも高まりますし、社会生活で仕事をしている方に週2回通院させるのは、社会的コストの面でも妥当ではないと考えます。
ヒアルロン酸を週2回打たなければいけないというのは、やはり症状がそこまで強く出てしまうほど、膝の状態が悪いのだと推測されます。保険診療であれば、ステロイド注射を数回行う方法がとられるでしょう。個人的には、ヒアルロン酸注射を週2回打つなら、PRP治療や培養幹細胞治療を検討した方が良いかと思います。

費用について

詳しい費用については、料金ページにてご案内しております。また、当院の治療は自由診療になりますが、医療費控除制度が適応される場合があります。併せて内容をご確認ください。

脚注

  1. [1]Marshall KW. Intra-articular hyaluronan therapy. Curr Opin Rheumatol. 2000 Sep;12(5):468-74.
  2. [2]白田智彦ほか 変形性膝関節症に対し再生医療として施行した自己血由来PRPを用いたPFC-FD(platelet-derived factor concentrate freeze dry)治療の臨床成績第32回日本整形外科学会基礎学術集会(パネルディスカッション) 2017
  3. [3]Bannuru RR, et al. Therapeutic trajectory of hyaluronic acid versus corticosteroids in the treatment of knee osteoarthritis: a systematic review and meta-analysis. Arthritis Rheum;61(12):1704-11. 2009.


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